赤色赤光

幼年期の思い出なしに生きていけない。卒業生のご両親へ。

2018年3月15日

卒業文集「おもいで」が発行されました。卒業生124名が一人ひとり、楽しかった園生活のあの日・あの人について愛情たっぷりに綴っています。

 

どんな思い出も多少の感傷を含んでいます。長く生きれば余計そう思うのですが、楽しかった思い出より、悲しみや苦境にあった思い出の方が鮮明であり、また長く記憶されていきます。思い出は悲しみを蘇らせもするし、また和らげもする。私たちの人生は、そういった思い出を何年もかけて育てながら、受け入れていくものなのでしょう。

園生活は、誰一人例外なく「楽しい思い出」です。その上の学校生活やさらに社会生活が、万人にとって楽しいものであるかは、人それぞれです。しかし、幼稚園生活は間違いなく人生最高の幸福に溢れている、そのわけは、逆説的な言い方ですが、幼年期という季節が、もっとも繊細で儚く、また傷つきやすいからではないでしょうか。別の言い方をすれば、「弱さ」の只中を生きているから、畏怖や無知に正直だから、あらゆるものが無上の楽しさとよろこびに満ちていると言えるのです。

子どもたちは可能性に溢れています。卒業生はたくましく、凛々しく、育ってくれました。しかし、それは自立や主体性の早急な確立を意味するのではなく、これから先の人格や能力の涵養に向けて、長い育ちの小さな出発期を迎えたに過ぎないとも思います。

大人になれば、悲しみに打ち震え、苦しみにもがくこともあるでしょう。そんな時、最も幸福であった幼年期の思い出を想起することができるなら、また人生を新たな気持ちで生き直すことができる。だから、幼稚園時代の思い出こそ一生もの。そう思うのです。

 

「幼年時代の思い出から得た神聖な貴重なものなしには、人間は生きてゆくこともできない」ドストエフスキー

 

卒業おめでとうございます。お父さん、お母さん、子どもたちのこれからをどうぞよろしくお願いします。

 

 

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