赤色赤光

彼方から聞こえてくる歌声。春の光。

2023年4月11日

今週から全園児通常保育が始まりました。二日続きの快晴で、気温も上がって、春爛漫を満喫しています。
登園のピークが過ぎた頃から、あちらこちらの教室から子どもたちの歌声が流れてきます。歌のレッスンというようなものではなく、おそらく担任の先生が奏でるピアノに自然発生的に歌声が伴ったものでしょうが、それが他のクラスの歓声やら笑い声と合間って、園舎全体が美しい共鳴箱となります。おそらく3年前の春、コロナとなって以来、ずっと聴くことになかった春のエコーです。

3年前、前代未聞の学校園の休校園となり、あの年の春は、全職員が訳も分からず慣れない(配信用の)動画づくりに専念していたことを思い出します。次の年も次の年も、分散とか、マスクとか、発声の抑制とか、何らかに自粛・規制がつきまとい、幼稚園はいつもの春を忘れかけていたのかもしれません。無理もありません。担任の先生が心底安心して、子どもと向き合えるようになったのは、ごく最近のことなのですから。

コロナが下火となって、街はすでに活気を取り戻しつつあります。景気の回復もありがたいことですが、それ以上に、幼稚園の子どもたちや先生が元気を取り戻すこと、安心を、日常を取り戻すことの方が百倍も大切だと思います。それは、子ども自身を、また家族や地域や社会全体を支え、励まし、抱きしめるものだからです。少子化の文脈ばかりで語られますが、子どもは統計や数値の対象ではありません。一人一人が掛け替えのないいのちであり、希望であり、愛情です。人間の尊厳であり、社会の秩序であり、そして創造の源です。私たちは、3年のうちにくすんでしまったその原像を力強く描きなおす、役割と責任があると、新しい春に心を促されています。

園庭にいると、園舎のあちこちから歌声が響いてきます。お念仏や音読や、先生の勢いのある掛け声や、友を呼ぶ声、チャイムのメロディーも全てが総和して、幼稚園のリアルを描き出します。こればかしはAIでは再現することのできない、美しい光景です。
彼方から聞こえてくる歌声を耳に、なつかしさだけでなく、そこへ立ち返る思いを新たにしています。

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