赤色赤光

世界で異なる学力観。日本のオリジナルを再評価する。

2017年12月18日

つい先頃、OECD(経済協力開発機構)が世界の15歳を対象とした「協同問題解決能力調査」の結果を発表しました。チームの一員として他人と協力して問題を解決する力を計測するもので、これがはじめての実施、詳細は省きますが、日本はシンガポールに次いで第2位の高い成績を示しました。お茶の水女子大学の浜野隆教授がこんなコメントを寄せています。「(日本の)子どもは集団行動の中で役割分担や協調性のたいせつさを学んでいる。今回の調査でも他国に比べて他者と共同で課題にあたる力が高いことが裏付けられた」(日経新聞11月22日)
時に集団主義、画一的と批判される日本の学校教育ですが、人間関係づくりや「和」を重視する国民性を含め評価されたというべきでしょう。私が注目するのは、このところこういった従来の学力調査にはない出題や方法が、新しい学力観として世界的に普及してきている点です。国語、算数、英語といった教科で学力を測るのではなく、問題解決や関係構築力、コミュニケーション能力など幅広い観点から見ようとする視点が明らかです。それが、2020年のわが国の教育改革にも波及していくことは自明のことでしょう。そういった国際基準において、世界トップクラスの教育先進国・日本が何を目指すのか、なかんづく幼児教育の役割は何か、などと色々考えさせられます。

『日本の15歳はなぜ学力が高いのか』(早川書房)という本を読みました。イギリス人教育ジャーナリストが、世界の教育先進5ヵ国の学校現場を実際に体験して著したルポですが(この邦題には偽りありですが)、ここでも日本の教 育の特異性が浮かびあがります。たとえば、日本の教育的良心として、誰にも等しく能力はあるという平等感や、教育の目的は集団の一員として生きること、などを挙げています。もちろん同じアジア先進国のように競争はあるものの、早いうちから選別したり(シンガポール)、生まれやコネで差別(上海)しない。ある意味、教育の自由化と公平性を最も保証した国ともいえるのです。

身近なところで国際化が進み、世界の情報が同時的に入ってくる時代となりました。それは世界の多様性に学ぶと同時に、日本オリジナルを再認識・再評価するチャンスでもあります。あたり前のことがあたり前ではない。冒頭に挙げた学力調査においても、なぜ日本が集団行動を重んじてきたのか、改めて推量する必要があると思います。そして、それら新しい学力の源流としての幼児教育の役割とは何か。世界が小さくなるに伴い、幼稚園の教育に問われているものは限りなく大きいと感じています。

 

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