赤色赤光

感染症不安。「有難し」いのちへの気遣い。

2020年2月27日

新型コロナウィルス感染症の影響が広がり、学校園関係者はみな苦慮に苦慮を重ねていることでしょう。結果、ご承知の通り、卒業式までのすべての行事を中止としました。「そこまでしなくても」というご意見もあるかもしれませんが、国の方針でもあり、当園としては安全を第一に苦渋の決断をしました。
今日、園内を歩いていると、園児たちのあまりの快活さに胸つまるものがありました。年度の終盤を迎え、これまで育んできた充実を、身体的にも知能的にも存分に発揮して、走る、歌う、あそぶ。ふだんであれば、それもまた納得していたことかもしれませんが、このような事態となって、いのちの輝きに今更ながら驚きもし、深い感銘を覚えるのです。
法句経というお経に、こうあります。
「人間に生まるること難し やがて死すべきものの いま生命(いのち)あるは有難し」
人間として生まれたこと、今いのちあることは当たり前ではない、実に有難い(有るのが難しい)ことなのだという気づきは、こういう安全が脅かされている時こそ募るものです。自然災害に襲われた後、日常の平穏に感謝する。重篤な病気から回復して、家族のおかげを知る。よく似た感情です。
感染症のおかげなどと誰も思いませんが、でもこうした時にわが子への愛おしさ、切なさがこみ上げてくるのも事実です。つつましさとも言えるし、畏敬の念にも近い。これは「有難し」いのちへの気遣いなのだと思います。その感情を不安や怒りに増長させるのではなく、今は静かに心の箱に収めておくしかない、と思います。
状況は予断を許しません。2週間経ったから、安心の保証はありません。大人たちが困惑する渦の中、それでも子どもは一日一日成長していく。今はその安泰を祈って、丁寧に心を配りながら日々を過ごしていくしかない。そう思うのです。

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