赤色赤光

「卒業の日に贈る、安心立命の願い」

2020年3月17日

今年はいつになく、せつなさがこみ上げる春となりました。

先月28日の全国の休校要請、その後も大阪で感染が相次ぎ、目まぐるしく状況の移り変わる日々となりました。当園も2週間の休園を余儀なくされましたが、年度末の大事なこの時期に、子どもたちの姿が園内にないとはさびしさを通り越して、小さな疼(うず)きさえ感じています。
お父さまお母さまも、急な休園決定でたいへんなご心痛ご苦労をおかけしたことと思います。保育園は開園しているのだから、と検討もしたこともありましたが、決して広いとはいえない園舎に500人近い人が密集する環境(また年度末は格別に人の出入りも多く)は休園以外にないと苦渋の決断をいたしました。当園の規模や環境を踏まえ、どうかこのたびの判断にご理解とご寛容をいただきますようお願い申し上げます。

小学校では卒業式を各教室に振り替えて行うところもあるようです。幼稚園は規模もいろいろですが、年長児が100名を超えるところはあまりありませんし、当園のように式典形式で行うところは、まれであるかもしれません。例年ですと2時間を超える卒業式ですが、これをいかに縮小するか、職員が知恵を絞って本日の次第となりました。冒頭の献灯や卒業証書授与は、本来一名ずつとなりますが、このたびは新たな集合形式となっています。どうかその趣きを子どもとともにお受け止めいただきたいと思います。

どんなかたちであれ、子どもにとって幼稚園の卒業式は、人生ただ一回限りのものです。仏参も歌も、また「別れのことば」もいつもの通りです。128名の小さな体を寄せ合って、講堂いっぱいに声響かせてくれることは例年同様、いやそれ以上かもしれません。事前の練習の様子に、私も、全職員も胸が熱くなりました。
目に見えない不安におののくことよりも、私たちはまずそのこと自体に最大限の感謝と敬意の念を忘れてはならないとも思います。

仏教語に「安心立命」という言葉があります。「天命に身を任せ、心を落ち着けること」というような意味ですが、今日のこの日に置き換えれば「仏様のご加護を願って、今あることの幸に感謝する」と受け止めていただいてよいでしょう。「安心」すべきはわが子であり、また私たちでもあるのです。
仏教の幼稚園にご縁をいただいた皆様ですから、どうか「安心立命」の境地で今日の日を笑顔でお過ごしいただきたいと思います。

最後に、ご家族のみなさま。中には卒業式列席を楽しみにしておられた方々も多いと存じますが、かような事情でご遠慮いただくことになりました。まことに心苦しくはありますが、今日の1日に限るのではなく、園生活3年、4年の間、子どもたちはご家族の愛情をいっぱいいただいて、このたびパドマ幼稚園を巣立ってまいります。その凛々しい姿あるのは、子どもを信じ、愛し、励まし、ともに歩んでこられたご家族のお心があっての賜物です。その慈愛を誰よりも、み仏はご存知でいらっしゃいます。
本当にありがとうございました。心から厚く御礼申し上げます。

南無阿弥陀仏
ご卒業おめでとうございます。

令和2年3月16日

パドマ幼稚園全職員を代表して

園長 秋 田 光 彦

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