赤色赤光

ドキュメンタリストとの語らい

2008年12月24日

23日、應典院でドキュメンタリー映画「オオカミの護符」の上映会がありました。今年の文化庁映画賞優秀賞を受賞した秀作で、東京から由井英監督も来場、上映後、私とトークを行いました。

映画の内容は、下記Webを参照してほしいのですが、オオカミのお札に始まり、御嶽信仰、講、祭礼、神領等々、現代の日本とは思えないような、地域に根付いた信仰と暮らしがゆったりと描かれていきます。39歳と若い由井監督が、じつに7年の歳月をかけて撮り上げた労作でした。

トークで、監督は何度も「つながりの回復」を口にされました。ひとつ間違えば、「すたれつつある古い風習」と片付けられそうなテーマですが、監督は「現代の日本社会に生き残っている、地域のちえの仕組みに学んでほしい」と言います。

例えば、私が感心したのは、講の組織では、互いにお金を出し合って自主運用する貸付金制度があって、その歴史は江戸時代から現在も続くということ。誰から管理されるわけでもない、村人が自律的に、相互に地域を支えあうさまざな「つながりの仕組み」がありました。

「なぜ人々は 支えあい、生きるのか。それをつなぐ絆は何か」との問いに、監督は「山や自然に対する感謝の気持ちがだいじでは」と答えてくれました。人間の権利や利害を 超えたところにある、大きな「おかげ」を感謝する信仰心のようなもの。監督は、「今こそ自然と人のかかわりを考えなおす時」と強調されていました。

「めぐりあったお百姓や風貌や語りぶりには、その土地が湛えている、“時の流れ”や“風合い”が息づいていると感じました」(同映画DVDの監督の言葉)

かつてあって、いまなくなったもの。なぜそれがなくなったのか、どうして私たちはそれを必要としなくなったのか、思いを巡らせたいと思いました。

映画「オオカミの護符」公式サイト
https://sasala-pro.com/cinema/

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