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幼児教育とエビデンス。保育の現場から発信。

2022年6月13日

幼児教育の世界でも、エビデンス(科学的根拠)に基づく考え方が普及してきました。幼児教育を巡る新刊図書もどれも「科学」や「実証」「データ」などを強調します。ヘックマン博士のペリー就学前プログラム(1962年から開始され、現在も追跡調査が続いている、アメリカ・ミシガン州のペリー小学校付属幼稚園で実施された実験のこと)以来、この傾向はますます根強くなっています。
このことと「教育の経済化」と無縁ではありません。デジタル化が進展し、説明責任や透明性、あるいは投資効果など、教育の価値をエコノミックな観点から捉えられるようになりました。世界の教育を定量化するOECDは経済団体(経済協力開発機構)ですし、ヘックマン博士も経済学者です。現代の幼児教育は、経済の視点から再評価されているといっても間違いではないでしょう。
その重要性は認めつつ、最近、危惧を感じるのは、エビデンスが前のめりになって、保育の現場がおろそかにされていないかという点です。十分に臨床での実践や経験もないまま、エビデンスだけを鵜呑みにしている傾向はないでしょうか。
そもそも幼児教育とは、不確実なものです。計画や行為の結果がとらえにくく、しばしば状況やケースに応じた柔軟な判断や行動が求められるものです。だからこそエビデンスなのですが、そこには保育の現場のゆたかな経験や知見が欠かせません。
パドマ幼稚園では、6月から新たなInstagram2本体制がスタートしました。子どもの発達過程や活動のプロセスがわかると好評です。またコンセプトブックで保育理念や方針を発表し、それを元に園児の発達過程に沿ったエビデンスづくりも計画の視野に入っています。まだまだ試行段階ですが、これらは外部の専門家頼みでなく、保育の現場からエビデンスを発信していこうという試みです。そこではデータだけでなく、教員の長年の経験で培われた直観や発想も反映していきたいと思っています。
本当に有為なエビデンスとは外部からもたらされるものではありません。まずは日々の実践をたいせつにしながら、そこへ新たな研究の視点をどう盛り込んでいくのか、その横断的な関係づくりが求められると思うのです。

 

 

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