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非認知能力と3つの課題活動

2021年5月31日

最近、コロナ禍もあって幼稚園では動画配信に力を入れており、ほぼ毎週のように新作が上がっていますが、前回アップされた課題活動の紹介動画は我ながら意義深いものであったと感じています。(以下、YouTubeのリンク画面です)

やる気を育む3つの課題活動

ご覧になった方も多いと思いますが、いずれも一見、「お勉強」のように見えます。黒板、プリント、鉛筆などが小学校を連想させるのでしょう。当園は幼児期のことば・もじ活動を推進していますので、似た印象があるのかもしれませんが、その目的は全く異なります。
動画の中でも当園の研究主任の中島先生がなんども強調していましたが、目的は、「みんなで楽しむ」ことです。作業は一人ずつ個別ではあるが、みんなで同じことをして安心だから楽しい。ゲーム的にしたり、アイデアを出し合ったりするから、さらに楽しい。採点も評価もなく、みんな等しく丸をもらって褒めてもらうので、もっと楽しい。誰もが達成感を味わうことができる。その経験自体が目的なのです。

近年、幼児教育では、「非認知能力」が大きな注目を集めています。詳細は省きますが、幼児教育が人間の生涯の発達に及ぼす影響の重要性と、育むべき能力の特色について国際的な理解が進むようになりました。日本でも、3年前に文科省から「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」という指針が明らかにされています。
「10の姿」には、「量・図形、文字等への関心・感覚」や「言葉による伝え合い」が代表的な姿として挙げられており、「生活や遊びの中で、数量や図形、文字の役割に気づいたり、活用するようになる」ことや「言葉を通して、先生や友達と心を通わせ、言葉による表現を楽しむようになる」ことなどねらいが示されています。
お断りしておくと、この指針が、「幼児期からの書写活動」を推奨しているわけではありません。一般的に、もじ、作文を書く活動は、幼稚園ではまだ早いとされるのかもしれませんが、すでに半世紀近く幼児の作文活動に取り組んできた当園の立場からすると、非認知能力を通してその本来の目的を確認することができたのです。
幼児の作文は出来栄えの上手下手ではありません。もじを使って表現するよろこびであり、想像力を活かす楽しさです。それによって、「豊かな感性と表現」を育み「社会生活との関わり」や「思考力の芽生え」(いずれも「10の姿)より)などを促すことにつながっていきます。大事なことはプリントの上に残された「成果」ではありません。それをきっかけとして、引き出された子どものやる気や集中力、粘り強さこそ目的なのです。

大人は、数値やデータなどしばしば見た目のわかりやすさで子どもの発達を捉えがちです。プリントもその使い方次第で、お勉強になってしまうリスクもあります。
いったい私たちは、この教育を通して何を育てようとしているのか。非認知能力は、幼児教育の目指すところを明確に示してくれているのです。

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