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コロナの時代と子どもの言語能力

2021年10月12日

コロナが少し落ち着き安堵されているのではないでしょうか。幼稚園も徐々に正常化に向けて試運転を始めているところです。
この1年半の間、少し気になっていることがあります。コロナ以前から言われてきましたが、子どもの読解力、あるいはその元となる語彙力の低下についてです。おうち時間は増えたものの、少なくともコロナ以前より改善されたとは思えない。テレビやネットに貼り付け状態のスクリーンタイムは増える一方ですが、もちろんこれが子どもの言語環境に良い影響を与えるとは思えません。
以前から教科書が満足に読めない中学生が1/3いると言われており、すでに状況は深刻ですが、その要因は幼少期における子どもの言語経験の質と量に起因するのはご存知でしょうか。

子どもの言語能力の発達について、家庭それぞれの文化的な環境の影響が大きいことはよく知られています。学力格差でも問題となりますが、経済的に豊かな家庭と苦しい家庭では、残念ながら語彙力も読解力も明らかな差異が生じます。言語力は不可避的に、生育環境の影響を受けるのです。
ベストセラー「読書をする子は○○がすごい」(榎本博明著)には、これを裏づける話題がたくさん紹介されています。
具体的には、「家の蔵書が多いことが子どもの読書量の多さに関係」しており、「(蔵書が多い家庭は)美術館や博物館に出かけることも多く、そういう文化的刺激が子どもの学力の高さにつながっている」といいます。また、「親に図書館や書店に連れ行かれた経験の多い子どもは、読書好き」というデータもあります。まさに親と子は、以心伝心なのです。
さらに子どもの語彙力について、驚くようなデータも紹介されています。カナダの心理学者ビーミラーは、「幼稚園入園時の語彙レベルが下位1/4に入る子どもたちは、語彙力でも読解力でも」平均並みの子どもに追いつけないばかりでなく、小学校6年生までにその差は「ほぼ3学年分まで広がっていく」と指摘しているというのですが、かなり衝撃的な内容です。

だから、早急に幼児の早期教育をやりましょう、といいたいのではありません。言語能力とはすなわち親から子どもへの「世代間伝達」なのであり、その多くは有形無形の文化環境によるものなのだということなのです。幼稚園も同じです。
子どもは自分で自分の環境を選べません。親を選んで生まれてきたわけでもない。やはり模範たるは私たち大人がどれだけ適切な言語環境を提供できるかにかかっているかと思います。
まず家庭が、両親がそのような環境になっているかどうか、意識してみましょう。お父さんお母さんが、どれだけわが子と言語コミュニケーションに努めているか、大切なポイントです。また幼稚園も、家庭ではできない学校としてのことばの環境づくりにいっそう勤しんでいきたいと思うのです。

 

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