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■小学生の暴力行為急増。園の生活教育ができること。

2022年10月31日

文部科学省が先日「2021年度の小中高校生の問題行動に関する全国調査」を公表しました。学校内での暴力行為は前年度比403件増の8435件、特に小学生の事案が過去最高となり、初めて中学校を上回ったとか。小学生の場合は、ちょっとした乱暴まで、「暴力行為」としてカウントされるようになった実情もありますが、何れにしてもやるせない結果です。
教育関係者は理由として、「コロナ禍でマスク着用や黙食をするなど子どものストレスがたまっていることも背景として推測される」としますが、それで結論づけてよいのでしょうか。何かといえば「コロナだから仕方ない」では、本質を見誤ると思います。
特に低学年、例えば「小一プロブレム」問題は暴力行為と直結していると思いますが、学校関係者は口を揃えて、「家庭の教育力低下や感情をコントロールできない子どもの増加」と、つまり就学前の教育環境の問題を指摘します。園や家庭でしっかり育ててくれよ、というわけですが、むろん万能の解決策があるわけではありません。これは幼児教育の、いや日本の社会全体が背負うべき課題であって、誰かを批判しても始まりません。

しかし、幼児教育を担う私の立場からは、考えるべきことはあります。
どうも私たちは、こういった問題に対処する方法があるはずだと考えがちです。もちろん徳育も大事ですが、それよりも、幼児教育の王道は、生活教育にあるのであって、毎日の生活を通して経験する、あそぶ、考えることの意味をもう一度思い返すべきではないでしょうか。
生活とは、文字通り生きて活動することであって、生活教育はけっして、しつけや習慣だけをいうのではありません。幼児の場合、幼稚園であそぶ人間関係も、規律や規範意識も、「もじ・かずへの関心」や「探究心や思考力の芽生え」も、すべて生活経験の中で得られるものであって、それをしてはじめて幼稚園という集団生活の場が必要となってくるのです。
仲間とともに経験しながら、互いにかかわったり、コミュニケーションを深めたりする。
「非認知能力」でも、他者と協調したり、自己を抑制したりそういった数値では測定しようのない能力を、生活面からとらえなおそうとしています。その積み重ねが、最善の就学前教育の目指すところなのです。

当園では、最近プロセスを観る保育を進めています。保護者の皆さんにもインスタや動画などでご紹介していますが、保育で生まれた子どもたちどうしの交流や協同、あるいは対話といったものが、どのように将来の子どもたちの人間力へと育てていくのか、とても重要であると考えています。
日本の保育で昔からいわれてきた「意欲・心情・態度」といったものを、どう育み、どう就学後の心の安定へとつないでいくのか、小学生以前に私たちが努めなければならないことはたくさんある、と思います。

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