赤色赤光

■保育参観が変わる。子ども会議で話せなかったわが娘。

2022年11月25日

2学期の保育参観が終わりました。いずれも学年も大勢にご参加をいただきました。1学期と違って、時間も延長して1時間少しとみていただくことができました。
長くパドマに通ってくださる保護者には、異色の参観だったかもしれません。日課で一体となって、跳び箱では元気よく、プリント類もテキパキと、といった光景が今回は、年長「子ども会議」だったり年中「共同制作」と、いつもは見慣れない活動だったからです。最年少・年少は、講堂の舞台に飾られた段ボールの満艦飾のお城を、感嘆しながらご覧になっていました。

すでに年度始めからお伝えしているように、パドマ幼稚園では今、いろいろな新しい取り組みを進めています。これまで通りのパドマらしい活動はしっかり継続しながら、その上で、学年ごとにチャレンジングな保育が始まっています。
最年少・年少の「アート保育」では、好天の下、園児が園庭いっぱいに広げた段ボールに自由に色を塗りたくりました。ハケとか絵筆、ローラー、中には自分の手足も使って、ベタベタと。やりたいと思うことをふんだんに経験して、後日、講堂ではそれらを組み合わせてみんなでお城を作りました。「ここは誰のお部屋だよ」「ならドアがいるね」「こっちまで廊下だよ」と相談しながら、出来上がったのがあの巨大なオブジェです。
年中の共同制作は、手先を使った紐通しなのですが、これが色や図形を自分で選んだり、友だちと話し合ったり、また作業に集中して最後までやり遂げたり、先生任せではない、じぶん主体の場面がたくさん見られました。参観のお母様からも、「グループのみんなが揉めることなく、意見交換して、交渉したり、譲り合ったり、判断している姿が見られました」とお褒めの言葉をいただきました。

年長になると、ぐっと高度となり、「子ども会議」では道徳(対人ルール)や性格(やさしさ)についてグループによる話し合いがありました。くわしい内容は省きますが、何かの教材に取り組んでいる、というより、クラスの仲間同士が日々の生活や関わりの中から、互いの関係性やコミュニケーションを育みつつある、そのプロセスを敢えてご覧いただきました。
もちろん全員均等とはいかないものですが、1学期から積み重ねてきた経験から少しずつ「話し合いの作法」のようなものが身についてきたようにも思います。後半には保護者も議論の傍聴者に。なかなかユニークな光景が生まれました。

こうした話し合いではやはり積極的に発言する子もあれば少しためらう子もいます。参観ともなれば緊張もあるでしょう。あるクラスで見ているばかりで一言も発言できなかった子どもがいました。そのお母さんからのアンケートがありましたので、一部を抜粋して紹介します(一部再構成)。

「家に帰ってから、娘に、今日の参観、日課見ていたら、すごくかっこよかったよ(中略*)日課の4点セットもすごく丁寧に使っているのね、と言うと、○○組で一番丁寧に使ってるようにしたいねんと」
「でも、お話し合いの時、みんなの意見を聞いて、何も言ってなかったけど、あの絵を見て、○○ちゃんはどう思ったの、と聞いたら、こう思ったと。そうだったんだね!じゃぁ、これからは勇気を持って自分の意見を言ってみたら、と伝えました」
翌日のことです。バスから降りてきた、わが子が「ママー、今日はうれしいことがたくさんあるんだー!」と笑顔で帰ってきました。
「今日は、ママが昨日、お話し合いで、自分が感じたこと、思ったことを伝えてみたら?って言ったから、勇気出して言ったよ。そしたら、1人の男の子が聞いてくれて、わたしの言ったのが発表になったんだよー!」とすごくうれしそうに喜んでいました。「自分の意見を言ったんだよ!」
「参観で実際を見たので気楽にアドバイスしたのですが、自分も勇気を出せば発言できる!と自信を持った様子でした。これを機に、積極的に発言できる子どもになればいいなぁ、と思いました。」

子ども会議は言葉による話し合いや子ども自身による選択や判断といったことが大事なねらいになりますが、たとえ言葉を発しなくても、その子はその子らしく「場」に参加しています。子どもにはその子に適した経験の蓄積が必要であって、話すことも、また聞いていることも大事な経験の宝箱なのです。
たくさん話せたからできた、のではなく、その「場」にいたからたくさん聞けた、インプットできた、そしてこの子の場合、それがゆたかな先行体験となって、翌日(いつでもいいのですが)自ら発言できたよろこびへとつながっているのでしょう。これは、参観をチャンスにして、娘さんにプラスのメッセージを送ったお母さんの関わりがあったからです。普段からの親子関係の延長線上にあるものでしょう。

パドマ幼稚園の保育方針は、「集団のあそびとじぶん主体のあそび。両方のバランスよい環境と活動を通して、子どもの<内なる力>を育みます」です。<内なる力>とは自分から起こる内発的な動機づけであって、それが子ども自らの「描きたい」「歌いたい」「話したい」欲求と発現となります。アート保育も、共同制作も、子ども会議もどれも目的は同じ。目には見えない非認知能力の芽生えを育むのです。
そして、それは幼稚園だけでなく、これからの家庭生活、社会生活においても、大事なアプローチになると考えています。

     

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