赤色赤光

■探究あそび。なぜ、あの紙ひこうきは飛んだのか。

2024年7月2日

本日から七夕の名を冠した保育参観です。幼稚園でどんな活動があって、どんなふうにしているのだろうか。いつも保護者の皆さんの期待を感じます。

もちろん歌ったり、走ったりも、子どもたちの発達のすがたですが、そうした外に見える力とは別に、内側で育つ力もとても大切なものです。合唱やリレーは、いずれ行事の大舞台がありますが、内発的な育ちは行事や参観だけではなかなか伺えません。時間をかけてじっくりと醸成されていくものであって、それを「見える化」することも容易なことではありません。ですから、担任の先生たちの創意や工夫が必要となります。
こうした内発的な育ちを「非認知能力」と言いますが、中でも大切な能力・資質に「探究心」があります。
探究心とは、物事に対し物事の本質を明らかにして理解を深めようとする気持ちのことをいいます。そのための知識を得ること、(失敗を含め)経験を重ねること、また友だちと一緒に話し合ったり(対話)、試してみたり(協同)もその大事なプロセスです。大人には当たり前のことであっても、子どもには「なぜ?」「どうして?」の連続であって、その問いを一つ一つ自分たちで解いていくことに探究のよろこびがあります。内なる育ちは、外から教えていては身につかないのです。

年長5歳児が定期的に開く子ども会議では、1学期のテーマを「探究心を深めよう」としました。クラスごとに子どもたちの興味関心を広げ、調べる・話し合い・試してみることで内なる力を育てようという計画です。
ここでは、たけ組のケースをご紹介しましょう。
たけ組では月刊絵本がきっかけになって、紙ひこうきあそびをやってみることになりました。どうしたら飛ぶのか、なぜ飛ばないのか、どんな飛び方があるのか、小さいからか、軽いからか、折り方や素材が違うからか、いろいろな意見が出ます。特に9種類ある素材からどれを選ぶのか、子どもたちの議論が白熱しました。

その上で、班ごとに実作することになったのですが、飛行距離を測る必要に気づき、今度は計測についても話し合いがありました。
以下は担任の先生の記録の一部です。

内容 「実際に作ってみよう」
子どもの様子
①みんなで作ってみる
・班の中で作るときのルールを決める。
・1回ずつ折ってみよ!
・各班話し合ったルールを守って飛行機を折っていく。

②どうやって測ったらいいか考えよう
・測り方はどうする?測る場所は?投げ方はどうする?
・上から投げた方が風に乗って距離が延びるよ。
・同じところから投げないと測れないよ。
・風の有無で条件が変わるんじゃない?
・中がいい4 外がいい2 それぞれ理由を伝える。
・風がなくて、広いから体育館がいい。

そして、ある日、班ごとに別々の素材で作った紙ひこうきで飛行実験本番となりました。班には、飛行担当もいれば、計測や(メジャーで測っています)記録担当もいて、それぞれ協力しながら飛距離を試していくのです。では、一番のひこうきは、なぜ遠く飛んだのでしょう(結果は当日に掲示発表をご覧ください)。

お分かりのように、これは紙ひこうき競争ではありません。子どもにとって身近な道具を使って、楽しくあそびながら、探究心を育んでいます。それは奥深く、思考力や洞察力、あるいは協同心やチャレンジ心、さらに「数字や図形に興味を持つ力」など多様な資質・能力の芽を伸ばしていると言えます。小学校の教科のようにねらいが特定されているのではなく、内なる力がいきいきと発動していくのです。

明日からの参観日、年長各クラスの4会場には、それぞれアイデア豊富な探究あそびの発表が掲示されています。どのクラスも長い時間と、経験を重ねてできあがった力作です。担任の先生の思いも、また子どもたちのよろこびもみんなで分かち合い、人間の基礎基本=内なる育ちを、じっくり感じ取っていただきたいと思います。

ページトップへ