赤色赤光

サマースクール。仲間とともにあって、自律心は芽生える。

2010年7月26日

 年中、年長のサマースクールが無事終了しました。猛暑の都心を離れ、子どもたちは、しばし自然の中ですばらしい共同生活を満喫しました。

 子どもたちと、一緒にいながら感心したことがあります。境内でも、山道でも、広場でも、どの場面にあっても子どもたちは自分から「あそび」を見出します。おもちゃもゲームもないが、それだからでしょう、道端の落ち葉や石ころ一つひとつを「発見」して、忽ちあそびの道具に仕立てていきます。「子どもはあそびの天才」という言葉の通り、子どもの潜在的な力がつぎつぎ発揮されます。これは遊園地に行っていては、わからない。

 年長児とは山登りをしました。幼児にはかなり険しい山道でしたが、誰ひとり脱落することなく無事走破。ゴールとなった古代の遺跡の前で、全員揃って「般若心経」を唱えました。そこで、私は、園児を前におおむねこんなお話をしました。

 「『般若心経』の『般若』とは、本当のかしこさという意味です。でも、本当にかしこくあるには、たくましさとやさしさがないと成り立ちません。今日の山登りも同じ。みんなこの険しい山道をよく登ってきてくれました。心身ともにたくましく育ってくれましたね。また、道中みんなで思いやり、助け合い、クラス全員でゴールすることができました。その助け合いの精神こそ、やさしさの結晶。私たちは自分のためだけに生きているのではない。みんなのために生きているのです。このように『般若』とは自分だけのかしこさを言うのではありません。かしこさとやさしさとたくましさの、三つを備えた人が本当にかしこい人というのです」

 この「かしこさ」「やさしさ」「たくましさ」こそ、パドマ幼稚園の知情体の三位一体の総合幼児教育の要諦とすることろですが、これがふだんの教室ではなく、まったく日常とは違う環境や活動の中で、いきいきと発現されたことに、私は改めて発見をしました。教室もない、日課活動もない、いわば設定なき環境の中にあって発揮されていく、子どもの自律心。「子どもはあそびの天才」と同様、ふだん蓄えられてきたものが、新しい場所に出会って、力強く開花したとも言えます。

 自ら意志的に生きようとする、自律心は、むろん子ども一人ひとりに内在するもですが、その素地を行動や関係の中に織り込んでいくのは、集団の力です。山道を一人で歩け、といっても幼児は動かない。家族と行けば、すぐ甘えてしまうでしょう。ここでは、クラスのみんなががんばっているから、自分もがんばる。ひとりではできないが、みんなとならできる、という「集団律」があって、子どもの自律を育んでいくのです。

 サマースクールという非日常の世界だから、大いに日常とは違う体験を楽しんでほしい。また、それと同じ意味で、だからこそ幼稚園生活で身についた、共同体意識(みんなと協力する、集団のルールを守る、自己を抑制する…)を発揮する場でもあってほしいと思います。そのことを確信できたサマースクールでした。

 子どもたち一人ひとりの顔に、1学期に積み上げてきた年長児としての自信や誇りのようなものを感じました。

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