赤色赤光

生きる力としての学力を。Pisa(国際学力調査)の結果に思うこと。

2010年12月15日

 12月7日、国際学力調査(Pisa)の結果が公表されました。日本は、「Pisa」ショックと言われた前回06年に比べ、各分野で回復傾向になりました。とくに「読解力」は前回15位から8位へと急回復、文科省をはじめ教育界には久しぶりの朗報となりました。

 Pisaの読解力は、丸暗記で解答できるものではありません。様々な文章や資料から情報を読み取ったり、自分の考えを論理的に記述する力が求められます。国内で実施されている全国学力調査も、「Pisa」型学力を模範として、取り組んできました。

 なぜ読解力が急回復できたのか。ベースにあるのは、Pisaショックがもたらした学力向上の機運にあると思いますが、具体的には各学校で取り組まれた「朝読書」の奏功が挙げられています。小学校の始業時などの短時間読書も普及しており、小説や新聞に親しむ生徒も増えているとか。今からでも遅くはない。結構なことです。

 こういう調査は、順位ばかりが注目されがちです。上位にランキングされたのは、全分野1位の「上海」をはじめ、韓国、シンガポール、香港など新興アジア勢。一昔前のモーレツ日本を彷彿とさせますが、順位だけで一喜一憂することもないでしょう。それよりもせっかく改善の兆しのある学力を、どう確実なものとして定着させていくのか、幼児教育は学力競争が目的ではありませんが、その基盤を担う存在であることは確かです。当園でも、園を挙げて読書あるいは読み聞かせ運動を進めていますが、これも将来の学力の「下ごしらえ」といえるでしょう。

 それ以上に、必要を痛感するのは、テクニックとしての学力ではなく、生きる力としての学力をどうつけるか、です。最近の子どもは学習意欲が減退しており、知的な競争を好まないとも聞きます。人材こそ宝の日本において、それはせっかくの資源を凍結してしまうことを意味しています。

 かつては若者の憧れでもあった「海外留学」も最近は低調気味だとか。このたびノーベル賞を受賞された根岸英一先生は、長い間米国で研究生活を過ごしてこられましたが、「若者は、好きなことを見つけ突き進め」と鼓舞しています。向上心が旺盛で、勉強が面白い。知的な競争を厭わない。そういう日本の若者を育てるためにも、幼児教育をスタートとして、すべての教育に国や社会の力を注ぎ込みたいものです。

ページトップへ