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スキップできない子どもたち? 身体を楽しく「鍛錬」する

2025年5月20日

パドマの子どもたちの特徴に、年中はだし、があります。事情がある場合は別ですが、一年を通して園庭や体育館でははだし。毎日、大地を蹴って駆けています。それに全身を支えるたくましい足。人間の土台が出来上がっていきます。
毎日幼稚園にいると、それが当たり前の光景なので、格別に感じることもないのですが、幼児の身体をめぐる今の状況を見渡すと、パドマの子が抜きん出てフィジカルであることがわかります。

信じ難い話ですが、知り合いの園長から、すぐ骨折するのでうちでは体操はやめました、という話を聞きました。他にも例えば、「1分間さえ立っていることができない。途中で座り込んでしまう」「椅床に座っていても背筋が伸びず、ぐにゃぐにゃになる」「両足をそろえたジャンプができない。スキップができない」等々、園長たちの嘆きはしばしば耳にするものです。年々、幼児の身体の脆弱化が進み、外からの刺激や環境に対応できなくなっているという話です。

その要因は、社会環境の変化、スマホの普及やスクリーンタイムの増大、コロナ禍の影響などいろいろ挙げられますが、ここで悪者探しをしても仕方ありません。今の子どもを囲む状況は、それを排除しようとしても容易ではない。むしろ、それに抗うように、幼児期から望ましい身体運動の経験や環境をどこまで意図的に担保していくかを考えるべきではないでしょうか。

冒頭、幼稚園では年中はだしと書きましたが、一例として、子どもの足指について考えてみましょう。
パドマでは毎日のローテーションは30分、その後の朝礼20分、ずっと園庭(あるいは体育館)ではだしで過ごします。朝礼の最後は、ダイナミックなパドマ体操です。
さらに、パドマの運動あそびでは、3歳児で「ワニさん歩き」「きりん歩き」などを試みています。肋木(ろくぼく)。平均台。登り棒。登り綱…すべてが足指の発達に関連がある。その機会を計画的に設け、子どもといっしょに楽しく経験できる、という点に幼児の運動あそびのねらいがあります。
はだしで生活をしていれば、足指を使う場面がいかに多いかわかります。歩行はすべてそうですが、階段の昇降、座席からの起立、いやあらゆる教育活動において、足指は自在に「活用」されます。足指を存分に使えば、土踏まずもたくましく育ちます。あらゆる神経終末が集まる足裏を刺激することで、子どもの脳にも好影響があるといわれています。

少子化になって群れてあそぶ仲間がいなくなりました。安全意識が浸透して、子どもだけが屋外に出かけることも少なくなりました。スポーツ教室は盛況ですが、テクニックを競うことよりも、まずは足裏をはじめ基本動作をきちんと身体化する経験が大切です。それはまず、子どもの生活の周辺環境を見直すことから始まるのではないでしょうか。

卒園して15年も経った大学生のお母さんがこうおっしゃっていました。
「うちの子どもは20歳なのに、今も家の中では年中はだしなんです。幼稚園の習慣がずっと続いています。おかげで風邪ひとつひかない健康をいただきました」

今や死語かもしれませんが、子どもの身体力にはやはり「鍛錬」は必要です。鍛錬をスパルタとか指導ではなく、仲間とともに、楽しく、自律的に(無意識のうちに)持続していくところに、パドマの運動あそびの魅力があります。
年少さんの園生活はこれから3年間、毎日、はだしの運動が続きます。そう、子どもの身体の健康とは、生活習慣において長く「鍛錬」された賜物であると思うのです。

 

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