赤色赤光

仕事とPTA。「もうひとつの考え方」を学ぶ。

2014年11月28日

先日、PTAの実行委員会が開催されました。12月は休会なので、早くも今年最後の委員会。40名近い委員さん、運動会や文化祭など大仕事を終えて、いつもより落ち着いた雰囲気でした。
委員会の最後は、毎年恒例の「今年のPTA」です。
「では、マイクを回しますので、この一年をふりかえってご感想をお願いします」
そこから委員さん一人ひとりのコメントを拝聴したのですが、それがどれもすばらしい。PTA活動を通して幼稚園愛をいっそう深めていただいたように思います。
中でも私が、感心したのは、仕事を持ちながらPTAをがんばってくださったあるお母さんからのコメントでした。
「4月当初は、仕事と両立するか不安で…でもいま思うと(PTAを)やってよかったと思います。PTAをやったから、仕事についても違う考え方ができるようになって…どちらもがんばれたかな、と思います」
慎み深い発言でしたが、仕事をお持ちのお母さんには同様の感想を持たれたのではなかったでしょうか。ご本人に訊ねたわけではありませんが、私はこんなふうに推測したのです。

世のほとんどの仕事には必ずつきまとう価値観があります。「効率よく」であったり、「合理性」や「スピード」「問題解決」等々、私たちの社会を運用する基本原理みたいなものです。誰もが納得できる「解」といっていいでしょうか、現代では家族も学校も同じような「解」にすっかり浸されおり、だから親も先生も「もっと」「早く」を連呼するのです。
ところが、幼稚園ではどんなに効率やスピードを求めても、それが必須の「解」とはなりません。指導や評価を基本とする学校教育と違って、幼児教育では感性や感覚の育みを旨とするからです。そもそも「効率のよい感性」などこの世にない。いや、往々にしてすぐれた感性は効率にとらわれず、ゆっくりした歩みの中で育まれるものだからです。
幼稚園には、世間とは異なる「もうひとつの考え方」を培います。子どもは、小さな大人なのではなく、大人の存在そのものを問い直します。「早いだけが正しいのではない」「わりきれないからおもしろい」「できる・できないより、何を感じたか」……大人が陥りやすい「ひとつの正解」に対し、「いや、人の数だけ正解はある」と、物事のいろいろな見方、感じ方を教えてくれるのです。

PTAは、子どもため、幼稚園のため、保護者が貢献してくださる活動です。会社のような私益のための活動とは違う。一方的に尽くす活動(贈与)であるが、そこから誰も損失感情を招かない。むしろ、損得を超えた仲間意識や奉仕精神、あるいは分ちあいや支えあいの心を育むともいえます。私益に対する、共益の仕事といえるでしょうか。
そのお母さんがどのようなお仕事をされていたのか存じません。しかし、ひょっとしたら会社的な価値観にくたびれていた気持ちが、PTAの仲間との活動を通して、少し元気を取り戻したのかもしれない、と思うのです。

 

 

 

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