赤色赤光

幼児期における「快の原則」。身体機能を存分に活かす。

2016年12月20日

「ロコモティブ・シンドローム」をご存知でしょうか。子どもたちの運動器(ロコモ)、体を動かすのに必要な間接や骨、筋肉などが機能不全を起こしている。加齢や運動不足が原因とされ、高齢者に多いとされてきましたが、最近は幼児ら子どもの3人のひとりがロコモの兆候ありといわれています(埼玉県医師会調べ)。幼い体にも「老化現象」が見られるというのです(産経新聞11月27日付)。
体格と運動機能は、比例して発達するわけではありません。現代っ子の身長や体重が向上する一方、体力や運動能力の低下は以前から指摘されています。いえ、早いうちからスポーツに親しみましょう、と言っているわけではありません。日常の動作、例えば「走る」「跳ぶ」「しゃがむ」「中腰」などができないのは、スポーツ以前のことであって、現代の子どもがいかに身体機能を使っていないかを物語っています。
身体を自分の意志で動かす行為は、幼児から児童、青年へと発達するに伴って、高度なものになっていきます。しかし、ロコモの子どもたちは、靴のひもが結べない、鉄棒が握れない、トイレットペーパーがうまく切れない等々、身体を上手にコントロールできにくい。それはスポーツ能力云々ではなく、子どもの生きる力の減退、意欲や気力の低下といったところまで影響が及んでいくのです。

ある心理学者が「機能快」という感覚について述べています。人間は生まれつき備わった機能を存分に使うとき、「快」が生まれるのであって、逆にこの機能を使えないと大きなストレスを感じるといいます。私たちは「歩く」機能を活かすから「走る」のであって、歩くことが気持ちいい、走ることでよろこびを感じる。そこに「快」の原則があります。
そう考えると、どうも現代の子どもの環境には、人間機能以外の「快」に侵されているように思えてなりません。テレビゲームしかりスマホしかり、車に乗せてしまえば親は楽かもしれませんが、子どもが自ら歩くという体験は浅いものにしかならない。少子化の時代はそれがますます加速していきます。何でも効率や利便性が優先される今、私たちが考えるべきことは大きいのではないでしょうか。
入園・進級して9ヶ月、いよいよ今年も歳末を迎えました。毎日の体育ローテーションでは、はつらつと駆ける子どもたちの姿が目にまぶしいほどです。園生活において、子どもがもっとも子どもらしい場面は、存分に身体を動かしている時以外ありません。
跳び箱やトランポリンとどう跳ぶか、という技術の以前に、ただそれが楽しいから、身体が気持ちいいから、仲間とともに打ち込むその姿こそ、機能快の原点を見るのです。
いえ、運動だけではありません。存分に言葉とあそび、存分にリズムとあそんでいる時、すべてが「機能快」であって、そこから人間として生きるよろこび、仲間と協同するよろこびの芽が息吹くのだと思います。

どうぞご家族揃ってよいお年をお迎えください。

 

ページトップへ