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手づくり絵本「20回目のお墓まいり」。いのちの継承を学ぶ。

2012年11月6日

 今年のバザー文化祭が、盛況のうちに終了しました。この日までご準備いただいたPTAの皆さまには、本当にご苦労をいただきました。心からお礼を申し上げます。

 さて、子どもたちの作品展のうち、今年の夏休み課題、年長児の手作り絵本の入賞作が展示されていたのはご覧になったでしょうか。私は、ある年長児の書いた「20回目のお墓まいり」に深く感銘を受けました。2年前に亡くなった祖父を、お墓参りという家族行事を通して、静かに追慕する作品です。

 


 絵本は全20ページ、最初は(1歳半だったらしい)おじいさんと行ったお墓参りの場面から始まります。
 
「1回目。おじいちゃんにだっこされて、さおり、はじめてのおはかまいり。ちょうちょがとんできた。『ようきたなぁ、とごせんぞさまがよろこんでいるよ』とおじいちゃんがいった」
 この子は、それから季節ごとにおじいちゃんと墓参りに行きます。蝉とり、クリ拾い、雪だるま‥‥数年が経って、やがておじいちゃんは身体が動かせなくなっていることが伝えられます。
 
10回目。おはかまいりのあと、車の中でまっていたおじいちゃんが『さおりのランドセルすがたを見たいから、おむかえがきても、ことわらなあかんなぁ』と大わらいした。わたしもいっしょにわらったよ」
 11回目は車椅子、12回目は病院のベッドの上、そして13回目、この子が3歳の時、祖父は帰らぬ人となりました。
 「13回目(の墓参り)。おじいちゃんはおはかの中でまっていた。かぞくみんなでおはかに手をあてて、いっぱい、いっぱい、ないた」

 この絵本をつくるきっかけは、今年の夏、おじいちゃんのお墓の周りを蝶々が舞っていたからだといいます。もっと幼い頃の、1回目の墓まいりの情景が甦ったのでしょう。彼女と家族は、ひと夏をかけて、この切り絵細工の物語を編み込みました。文字通り、家族にしかできない合作なのです。本人が書いた「あとがき」には、その作業分担が記録されています。
 色画用紙に型を書いたのはお母さん、カッターナイフの補助はお父さん、和紙をちぎるのはおばあちゃん、紙粘土をつくるのはお姉ちゃん…この家族はどんな語らいを交わしながら、この絵本をつくったのでしょう。
 「毎日、髪をきったり、シャボン玉絵のぐのをれんしゅうをしたり、たいへんだったけど、おばあちゃんができあがった絵本を見て『どこのページにもおじいちゃんがいるわ。きっとおじいちゃん、お空から見てよろこんでくれているよ』とちょっとないていたので、わたしもちょっとなきそうになってけど、おじいちゃんにまた会えたみたいでうれしくなりました」

 仏教では生と死は、ひとつのいのちとしてつながっていると考えます。生きて死んでまた生まれて…私たちは長いいのちのリレーをしているのです。ふだんそのことを忘れがちですが、子どものまなざしが当てられて、生死はひとつの連続性を描き、家族という物語を刻んでいくのではないかと思います。横軸の現在の関係だけが家族なのではありません。過去、現在、未来へと縦に時間を紡ぐことで、家族は本当の家族となっていくのです。

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