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学ぶための脳と身体。幼稚園の運動の意味を考える。

2026年9月10日

近年、子どもの運動と認知機能との関係が、あらためて注目されています。最新の研究では、継続的な身体活動、とりわけ周囲を見ながら動きを調整し、次の行動を判断するような運動が、注意力やワーキングメモリ、感情や行動を調整する「実行機能」の発達に好ましい影響を与えることが報告されています。身体を動かすことは、単に筋力や運動技能を高めるだけでなく、「学ぶための脳と心」を育てる営みでもあるのです。

この知見を、未曾有の少子化が進む現代に重ねて考える必要があります。子どもの数が減るということは、単に幼稚園や学校の在籍者が減ることではありません。地域で一緒に走り回り、競い、じゃれ合う仲間そのものが少なくなることです。さらに生活の屋内化、遊びのデジタル化・個人化が重なり、子どもが自然に身体を使う機会は失われつつあります。かつて日常のなかにあった「群れて遊ぶ環境」は、もはや当たり前には存在しないのです。

自律神経の乱れや異常体温、スクリーンタイムの長時間化など、子どものからだをめぐる異変も指摘されています。突き詰めれば、使うべき時期に、からだを十分に使えていないことと無関係ではないでしょう。汗をかき、息を弾ませ、自分の身体を調整する経験が乏しければ、身体機能は十分に働きません。そして最新の研究が示すように、その影響は体力だけでなく、集中する、覚える、判断する、自分を制御するといった、学びの土台にも及びます。

では、幼児期にどのような運動が必要なのでしょうか。大切なのは、個別指導によって跳び箱や逆上がりを早く習得させることではありません。自然発生的な子ども集団が少なくなった今、幼稚園が意図的に、集団で楽しく身体を動かす環境を保障することです。

パドマ幼稚園の運動ローテーションにも、跳び箱、マット、攀登棒など、さまざまな器具があります。しかし、それぞれの種目の上達が第一の目的ではありません。その核心は、「みんなで目標を共有しながら、規則正しく繰り返す」ことにあります。

仲間と同じ方向へ進み、前の子の動きを見て、自分の番を予測し、次の運動へ切り替える。そのなかで子どもたちは互いに共振し、集団の大きな流れに参入していきます。そこには、注意を向ける、順序を覚える、衝動を抑える、状況に応じて行動を変えるといった、実行機能の働きも自然に含まれています。しかも、それを机上の課題としてではなく、「みんなで動くと楽しい」という身体感覚を通して経験できるのです。

次々と運動が展開するワクワク感、少し手を伸ばせば届く目標、できてもできなくても流れのなかでもう一度挑戦できる安心感。ローテーションは、誰かに与えられた楽しさではなく、子どもたち自身が仲間とともにつくり出す楽しさを育てます。

「走る」「跳ぶ」「登る」「這う」「投げる」。自分に備わった身体機能を存分に使い、仲間と動く快さを、まっさらな身体に刻み込むこと。それは、家庭や個別の体操教室だけでは得難い、集団教育ならではの価値です。

「少子化」と「個人化」によって、子どもが身体を動かす環境が自然には成立しなくなった今、幼稚園における運動は、数ある活動の一つではありません。運動を毎日の習慣として保障することは、体力を育てるだけでなく、学ぶ力と人とつながる力を育てることです。ここに、現代の幼稚園が担うべき、いっそう重要な役割があるのです。

 

参考資料

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