赤色赤光

無言社会。ことばの手触りを届けること。

2017年4月24日

 昔に比べて、いま格段に家族との会話が減っていることをご存知ですか。少子化になると、まず話し相手の家族が減る。さらにスマホが普及して、電話もほとんど使わない。勉強部屋の子どもとの会話をLINEでしています、という人も珍しくありません。現代は「無言社会」なのです。
生後3年間の乳児の語彙を調べたデータがあります。赤ちゃんのそばで家族が、どんな会話をしているか、どれだけの量の言葉を使われているか、それによってすでに3歳の子どもの語彙力に違いがあるそうです。

 さて、子どもにどんなことばがけを心がければよいか、そのヒントに、お釈迦さまの教えをお伝えしましょう。
正しいことばがけに対し、自覚的であり、抑制的であること。そういうことばのポイントとして、古い仏典には下記の5つを挙げています。

①そのことばは、時機がふさわしいか。
②そのことばは、慈しみに満ちているか。
③そのことばは、事実であるか。
④そのことばは、有益であるか。
⑤そのことばは、柔和であるか。

  5つの心得のうち、一番最初が「柔和=やさしいこと」ではなく。「時機=タイミング」を挙げていることも興味深いと思いますが、ともあれ2500年も前から、人類はかくもことばを大切にしてきたわけです。そして、今もなお、この問いかけは達成することがなく、続いている。何と奥深いことでしょう。

 幼児の間、私たち大人のことばがけは、意味や情報の伝達だけが目的ではありません。それよりももっと大切なものは、ことばの根底にある私たちの願い、思いがどれほど伝わっているか。それはことばの内容というより、むしろことばの環境、ことばの手触りに現れるのではないでしょうか。
当園のあるベテランの先生が、新年度の抱負としてこんなことを述べてくれました。
「子どもたちの手本となるような、やさしく、ていねいで、正しい日本語の使用を心がけていきたい。職員同士の会話でも、親しさだけでなく、互いに意識していきたい」
これはご家庭でも同じこと。子どもが相手だと、つい親しさが馴れ合いになったり、感情に流されることも少なくありません。子どもだからこそ、やさしくていねいな、正しいことばがけを心がけていきたいものです。
ことばは生き物。今日一日、どんなことばを子どもに届けられましたか。

 

 

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