赤色赤光

年頭所感。子育ての幸福とは。

2012年1月16日

 平成24年、年初の新聞各紙は「日本人の幸福」について、大きく特集をしていました。読売新聞の世論調査によると、自分が幸せだと思う人は36%、そのうち70%近い人が家族を大切に思うようになったと回答しました。東日本大震災以来、日本人の幸福感に大きな変化が窺えます。

  去年11月に若き国王夫妻が来日してから、「幸せの国」ブータンがすっかり知られるようになりました。国民のじつに9割が「自分は幸福」と答えるこの国は、じつは仏教が国法となっており、「少欲知足」の価値観があります。何でも自分の欲しいまま、欲望を充足させる日本のゆたかさとは真反対の感覚です。何が幸福の基準となるのか。最近は内閣府や各自治体が、幸福の数値化という新たな取り組みをはじめています。

 

 その調査のあれこれについては措くとして、やはり日本の場合、とくに子育てが家族の幸福感に及ぼす影響が如実に現れています。「子どものいない人より、子どものいる人の方が幸せ」なのは各統計で明らかですが、子どもの誕生と結婚の関係については、「子どもの誕生と子育てにより結婚の幸福度は低下する」といいます(国民生活白書)。どの親も子どもをたいせつに思っていますが、子育てに大きな時間とエネルギーを費やすため、結婚自体の幸福度は下がると指摘されています。これは労力的な負荷以上に、そこから生じる孤立や不安によって、幸福感が阻害されるということでしょう。

 では、どうあればいいのか。こういう時、力を発揮するのが、周囲の人たちとのかかわりです。困ったときに相談できる相手がいるとか、親しい仲間との関係が心の支えになるとか。社会と断絶しない、つながりが存在するとか、そういう社会全体の「支縁」関係(ソーシャルキャピタルともいいます)が、子育ての幸福感を高めるといいます。また、子育てが幸せだと、家族や地域社会にも幸福感は波及していくことになります。

 今は子育て支援の施策が活発で、それ自体は結構なことですが、権利や制度だけが一人歩きしてしまって、肝心の幸福感が棚上げになっていないでしょうか。経済力や労働力のためだけの支援ならば、それはいつか破綻を迎えます。子どもを社会の中心に据えて、家族や地域の「支縁」の関係を組み立てなおすような地道な作業が求められていると思います。

 そう思えば、幼稚園にもできることはたくさんあるはずです。保育園と同じようには行かないけれど、子育ての不安の解消や、お母さんどうしのつながりづくり、また「親学」のような親になるための学びなど、手がけるべきはたくさんあります。もちろん、幼稚園ですから、まず教育機関として、子どもたちが集団生活の中で、たくましく個として育ってほしい、そのために全力を傾注していきたいと念じています。

 幸福は、誰から授かるものではありません。また、自分の思い通り仕立て上げるものでもない。家族・地域・職場など、いろいろなつながりを通して、じっくりと時間をかけてみなが協力して育てあげていくべきものなのです。子育ては、そのコアとなるものであってほしい、と思います。

 本年もよろしくお願いします。
 

 

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