赤色赤光

「幼児教育の質」の向上について。集団と個の遊び。

2019年9月14日

いよいよ10月から幼児教育無償化も始まります。子育て支援に加えて、ますます「幼児教育・保育の質」がたいそう取り上げられるようになりました。
今まで「教育の質」「保育の質」というと、設置基準とか職員配置とか、法令で定められた人的・物的環境をいったのですが、それが幼稚園教育要領等の改定と合間って、さらに教育そのものの中身に踏み込んだ見方、捉え方をするようになりました。たいへん望ましいことです。
質の担保にはそれを測る評価軸が必要ですが、幼児教育は数値による成果が出せません。テストの点数とか偏差値の世界ではないので、だからその過程、子どもの発達のプロセスをどう観るかがとても重要になります。
全国学力テストがあるように、テストの結果は一律に評価できますが、幼児の発達プロセスなど十人十色で、どれが優れているとなかなか判断できるものではありません。逆にいうと、一律ではなく、一人ひとりをたいせつにじっくりと見ていくところに幼児教育の真意があるのであって、それは評価者である先生がどれだけ丁寧に子どもを見ているかにも依るものだと思います。
さて、パドマ幼稚園の教育は集団教育であると折あるごとにお伝えしてきました。日課活動にせよ体育ローテーションにせよ、クラス集団が互いに響きあう共振の関係は、何よりも仲間意識や連帯感、そして信頼関係を育み、それを土台にたくましい個が育つ、とお話してきました。
もちろんこれは個を軽んずるとか、個々の発達を重視しないということではありません。まず子どもの仲間と共に同じ活動に親しみ、打ち込み、それが個の集団に対する安心感、信頼感となって、さらに躍動していきます。一人でできないことも、みんなとならできる、のです。

であればこそなのですが、その安心感、信頼感がベースとなって、個々の関心から進める活動も育まれていきます。
今年度から正課で取り入れたプレイルーム(おもちゃ)の活動、こちらは驚くほど自由で集団性を意識しません。45分間好きなコーナーに行って、銘々に遊ぶのですが、そこでも数人の仲間が生まれ、一緒に組み立てたり着せ替えたりするのに、子ども同士の対話や協働が促されます。先に述べた集団教育がダイナミックな遊びだとすれば、おもちゃはみんなと楽しむ主体的な遊びであり、そこには今までとは別種の関係性が芽生えているといっていいでしょう(同じことが昼休みの自由遊びにも十分見られることです)。
「教育の質」とは一面的に捉えられるものではありません。集団と個の活動がどのように関連しあい、互いの効果を高めていくか、私にはおもちゃの活動を通して、さらにクラス集団の信頼がより増したように見えるのです。

仏教教育の目的とは「やさしさ」や「かしこさ」を育むことであり、般若心経を唱えること自体ではありません。同じように、日々の教育実践はその行為自体が目的なのではなく、そこからどのように子どもの人格や能力が育まれているのか、それをどうとらえ、意味付けしていくのか、という専門的な視座こそが重要です。
「幼児教育の質」に応えるには、今一度、長い射程で子どもの発達を見直していかねばならないと考えています。

ページトップへ