赤色赤光

不自由とレジリエンス。年長児、初めての遠足。

2020年11月2日

先週、木曜日、年長児4クラスと一緒に遠足に行ってきました。思い返せば、今年の年長児は進級してから初めての遠足、外出となります。密を避けて、1クラス1台合計4台の大型バスを連ねて富田林のサバーファームへ向かいました。空は見事な秋晴れでした。

目的は「芋掘り」。広大な畑で順列になって、初めはスコップで芋を掘るのですが、最後は皆素手で土を掻き出すしかありません。ツルを手前へ力一杯引っ張って、掘り出した瞬間の笑顔は誰もキラキラ輝いていました。果物狩りとはまた違う、ダイナミックな収穫体験ができました。

ビニール袋いっぱいの(大小20個獲った子もいました)芋を、集合地まで運ぶのも園児には一苦労、それでもがんばって銘々の収穫を持ち帰りました(最終的には園で公平に調整して分配しています)。

さて、心地よい体験を終えて、午後には帰路となり、私はあるクラスのバスに同乗しました。往路は車中、日課をしたり、歌ったり、賑やかなのですが、復路は心地よく疲れたので、お休みタイムでもあったのですが、せっかくなので園長先生からお話を、ということになりました。

観光バスのガイドさんの席に立って、マイクを持って子どもたちにこう話しました。

「今日は楽しい一日でした。考えてみれば、君たちは年長になって初めての遠足、外出でした。幼稚園の最高学年になっていきなり4月5月長いお休みになって、園生活最後の行事が中止になったり分散になったり、不自由な思いをさせました」

通路から、じっと私を見つめている子どもたちの顔が見えます。

「あれも中止、これもできない、が続き、さびしい思いをしたことでしょう。でも、こうして幼稚園の生活がだんだんできるようになって、今日初めてみんなと一緒に遠足に行けたこと、みんなが笑顔でいてくれたこと、園長先生もうれしく思います。ありがとう」そんな話をするつもりはなかったのですが、思いがけず子どもたちに自分の心情を語っていました。真剣な子どもたちの表情に、胸迫るものがありました。

不自由なこと、理不尽なことは、子どもたちの将来にまたやってくるかもしれません。人生とはすべて思い通りにいかないものです。でも、だから凹んでしまったり、嘆いてばかりではつまらない。理想を言えば、不自由さを乗り越えて、またそれをバネにして復元していく力、回復していく力をつけていってほしいとも願います。まさに「レジリエンス(回復・復元力)」が求められるのです。

芋のツルから引き抜くのは難しい。大半はツルが途中で切れてしまいます。しかし、そこから子どもたちは諦めず、小さな手で土を掻き出し、土中深くまで掘り起こす。わが手で得られた収穫は、何よりも格別なものなのです。

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