赤色赤光

ワールドカップと日課活動

2010年6月4日

ワールドカップが間近となりました。サッカーに限りませんが、一流のアスリートは一日してならず。幼少期から人一倍の努力を積み重ねています。

スポーツの指導者に聞くと、選手がその「型」(フォーム)を身につけるには、同じパターンを2万回以上続けることだそうです。サッカーのパスやシュートの練習は、イメージ通りの動きを「型」として選手の身体に埋め込まなくてはなりませんが、それには気の遠くなるような「量」を伴います。

くりかえした結果が身につく、というのは、スポーツだけではありません。

 

パドマ幼稚園の教育活動は、そのほとんどが「日課」で構成されています。朝のフラッシュカードのみならず、音読も歌も発声も、そして「お念仏」も「般若心経」も毎日毎日くりかえし、3年間の幼稚園生活の間、欠かすことがありません。大人の目から見ると、盛りだくさんとか忙しそうとか、そういう印象があるかもしれませんが、それは勝手な思い込みです。

現代の教育は、「教えるー教えられる」という論理の関係が基本にあります。「わかる」「できる」が、その成果ですが、日課活動が目指すものは、望ましい「型」(フォーム)の獲得です。サッカー選手の身体はボールに対して自然に反応しますが、それは理屈で動いているのではない。意識とは別のところにある「型」のスイッチが入るのであって、幼児期に必要なものは、そのような「型」を自分の身体に刻みこむことなのです。

日課活動で展開されるものすべてが「型」そのものです。音の響き、リズム、テンポ、同時に声を出すという時の姿勢、勢い、態度など、これらが総動員されて、子どもの身体の中に「宝石を埋め込む」(齋藤孝)のです。自分の内側にしっかりした「型」があれば、意味は後からついてきます。コンピューターに例えれば、一生モノのOSを起動させるといえばいいでしょうか。

フォームの獲得には、気の遠くなるような「量」を伴う、と書きましたが、それを嫌うサッカー選手はいません。飽きることがない。なぜなら、それ自体が何よりも好きだからです。同様に日課活動でも、リズムに乗って声を出し、それが仲間の声とシンクロする感覚を心から楽しめるからこそ、子どもたちは毎日のくりかえしが苦にはなりません。「量」は負担ではないのです。

つまり、「幼稚園が楽しい」と子どもが言って下さるのは、幼稚園生活の「型」が徐々に身体の内側に育まれてきたことの証なのだと思います。
(ワールドカップ、日本を応援しましょう!)

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