赤色赤光

デンマーク・サッカー、少年指導の極意。

2010年6月21日

 

  ワールドカップで連日、日本中が沸き返っていますが、いよいよ次のデンマーク戦で雌雄を決することになりそうです。

 ところで、デンマークは、人口550万という大阪府よりも小さな国です。しかし、昔からサッカーは強い。人口1億2700万人の日本が世界ランキング45位に対し、この小国は35位に位置して、ワールドカップでは決勝トーナメント常連組です。

 その理由を問えば、「欧州人とは身体能力が違うよ」と答えが返ってきそうですが、じつはそれだけではありません。日本が野球世界一であるように、スポーツの優劣はその文化の層の厚さ、広さであったりします。具体的には子どもの時代から、スポーツクラブでどんな指導を受けてきたか、いかに練習を積んできたかによります。

 デンマークサッカー協会は、国を代表するプロ・アマの統括団体ですが、そこで「少年指導10ヶ条」が以下のように規定されています。

1)子ども達はあなたのモノではない。
2)子ども達はサッカーに夢中だ。
3)子ども達はあなたとともにサッカー人生を歩んでいる。
4)子ども達から求められることはあっても、あなたから求めてはいけな い。
5)あなたの欲望を子ども達を介して満たしてはならない。
6)アドバイスはしても,あなたの考えを押し付けてはいけない。
7)子どもの体を守ること。しかし子ども達の魂まで踏み込んではいけない。
8)コーチは子ども心になること。しかし子ども達に大人のサッカーをさせてはいけない。
9)コーチが子ども達のサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし,自分で考えさせることが必要だ。
10)コーチは子どもを教え,導くことはできる。しかし,勝つことが大切か否かを決めるのは子ども達自身だ

 ひとつひとつのコメントは控えますが、この10カ条は、スポーツに限らず子どもを教えるすべての人が銘記すべきことではないでしょうか。先生にも、親にも。

 サッカー協会の指導者で、専門のコーチはごくわずかです。多くのコーチ役を、地域の父親たちがボランティアで指導に当たっている。かつて自身が自分の父に教わったように、わが息子たちに、サッカーを通して人生の生き方を教えているのでしょう。デンマークのサッカークラブは一握りの才能を見つけだすための供給源というより、勝敗を超えたところにある、スポーツ文化の本質を伝えてくれているようです。

 本当のサッカーの価値とは、サッカーという回路を通して、情熱、共感、信頼、規範、そして自立心などを子どもに伝える、じつに教育的な営みと重なっています。
 

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