赤色赤光

音声から言語へ。子どもは言語をどう習得するか。

2011年4月25日

今年から小学校で英語が必須となり、巷は英語教育ブームとなっていますが、子どもたちはどのようにこれを習得しているのかを、脳のメカニズムから解析した成果が発表されました。小学生500人の母語、英語復唱時の脳活動を光りトポグラフィで調べた過去最大規模の研究です(2011年2月23日 首都大学東京萩原裕子教授の「脳科学と教育」研究チーム http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110223/index.html)。

込み入った話なので、単純化して説明します。
まず、子どもたちが英語をはじめとする新しい言葉を耳から学ぶとき、脳ではまず「音声」の分析が行われ、それが意味を持つ「言語」へと徐々に移行する。また、実験ではよく知っている単語の処理では脳の左半球が、逆にあまり知らない単語(英語は当初「非語」として)の処理では、右半球の縁上回が活発に活動することが分かりました。わかりやすく言えば、特に子どもが語彙を獲得する初期には、脳の右半球が重要な役割を担っているということであり、未知の言葉を習得する際には、右脳は意味を問わず、音のリズム、アクセント(音の強弱)、イントネーション(抑揚)などを頼りに処理しているということなどが分かりました。これは、子どもと言葉、言語の獲得を考える上で画期的な研究です。

 

じつは萩原教授は、この研究成果の前に日本語の発達的変化についての研究成果も発表しており、「この傾向は母語でも外国語でも同様に観察されたことから、言語に普遍的な現象である」とレポートで述べています。

小学生の英語教育に関心が集まりがちですが、私たち幼児教育に引き寄せて考えると、この研究は「幼児期において、日本語はいかに習得されるのか」というもうひとつの論点を現しているのではないでしょうか。

パドマ幼稚園の日課活動では、漢字や熟語のフラッシュカードや音読、素読などがテンポよく展開されます。幼い子どもにとって、漢字や熟語は英語同様「非語」ですが、それを意味ではなく、リズムやテンポで無意識に「体得」していきます。俳句や漢詩なども、音韻のあそびとしてみれば、子どもは楽しい。これを専門的には、「超分節的特徴」というそうですが、それをして言語以前の「言語感覚」といってもいいでしょうか。萩原レポートでも、母語でも英語でも、その脳の処理機能が今後の言語の発達を左右していくと指摘しています。

私たちは言語を、文語(書き言葉)中心で考えてきました。かつては声に出していた「読み」もまた、いつしか黙読中心となりました。今回の研究は、新しい言葉の習得の入り口には、音声(音韻)がいかに重要であるか、再確認ができました。あわせて、子どものよき言語感覚を育むために、私たち教師や仲間集団の存在がひときわ大切であると痛感しました。

ページトップへ