赤色赤光

ことばが光る幼稚園。意味を感得する。

2016年3月4日

 今年春から始めた幼稚園玄関の聖句シリーズが17点となり、恥ずかしながら全部を園舎入り口に掲示してみました。私の拙筆ぶりは棚上げしますが、一つひとつのことばに改めて当時を思い起こさせるものがあります。ことばはその時々に記憶と分ち難く連鎖しています。
また教室の中にも、たくさんのことばが貼り出されています。黒板には音読の詩や俳句 が、また側壁面には「今学期の学年目標」というのも掲示されています。例えば「信頼」とか「規律」「協力」…。わが園では、ことばがあちらこちらで光っているのです。
幼稚園の担任の先生が園児に語りかける場面は幾度もあります。もちろん活動における励ましであったり、生活上の教えである場合も多いのですが、もっともたいせつな語りは、人間の普遍的な価値についてです。いや、そんな難しいことばを使うわけではないが、園内で起きるさまざまな行い、ふるまいについて、それが何を意味しているのか、を語りかけるのです。
例えば4月当初に掲げられた「信頼」ということばは初々しいが、まだ実感には遠い。しかし年度末の今頃、「信頼」に出会うと、まさにことばが身体に入る。それは1年間の園生活を通して「信頼」という意味をみんなで積み重ねてきたからといえるでしょう 担任は明かすのでもなく、諭すのでもなく、ただクラスの仲間のひとりとして、ここで育んできた「信頼」のよろこびを語りかけます。極めて体験的に、共感的に。
辞書に開けばことばの意味は不変だが、本当のことばは環境や体験の中で意味の質量を高めていくものなのです。幼児教育において、「意味」はわかるのではなく、感得するものなのです。
さて、卒業式が迫ってきました。担任は子どもたちに何を語るのでしょう。そして子どもたちの心には、どんなことばの萌芽が息吹くのでしょう。今からそれが、楽しみです。

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