赤色赤光

人間性を司るHQを育成する。(わらまんエッセイ)

2011年1月17日

当園広報紙わらべまんだら冬号に掲載の園長エッセイを今日から3回連載します。

 

少し昔まで、「幼児教育と脳」といっても、周囲から奇異な目でみられたものですが、最近は若手の脳科学者がテレビのバラエティ番組で引っ張りだこのようです。隔世の感を感じます。

先日、有名な脳科学者・澤口俊之先生にお目にかかる機会がありました。テレビでお見かけするままの方でしたが、発達障害の早期発見や、教育法の効用など直にお話を伺うことができ、たいへん勉強になりました。

澤口先生が、語気を強めておっしゃったのは、やはり「幼児教育は、子どもの社会関係性の発達の上で最重要だ」の一言でした。最近の少年による残酷な犯罪なども、脳の欠陥や障がいが原因となっていることが多い(反社会性人格障害)。将来、わが子が健全な社会関係を営む上でも、幼少期に適切な教育を与えるべきだと力説されていました。

 

 

HQという言葉をご存じでしょうか。

HQ(人間性知能)とは私たちの脳の前頭連合野が担う知能で、IQやEQも含む総合的な能力です。それは言語とか音楽というような活動領域ではなく、他者との関係を上手に調節できる能力をいい、すべての人間性を司るセンター機能を備えています。

現代人の場合、その人間性は、さまざまな社会生活や社会関係の中で育成もされ、また発揮もされていくわけで、澤口先生はHQが急速に発達する生後8歳までの教育(社会関係)が、その人の脳に、生涯にわたって大きな影響を及ぼすといいます。  では、幼児の集団生活では、HQ育成のために何が必要なのでしょう。澤口先生は、著作の中でこう述べています。

「…しつけや厳格さはとても重要である。とくに社会規範を身につける上で不可欠である。また『規範を遵守するという規範』(メタ規範という)を教える上でも重要である」(「学力と社会力を伸ばす脳教育」)

紙幅の都合で詳しくは述べませんが、放任的ないわゆる自由保育は子どもをスポイルしているのであって、幼児期に必要な社会関係は、規則やルールに従って厳格に育てることによって育つ、と明言されています。ここでの「厳格に」という言葉は、「規律正しく」と理解すればよいでしょう。

日本の幼児教育の主流は、自由のびのび、個性をたいせつに、と長く「寛容」にやってきました。その結果、自分を抑制できない、集中力や注意力のない散漫な人格が育っているとしたら……。私には、澤口先生の言葉は、脳科学の最新の知見からの異議申し立てのように思えるのです。

(つづきは、21日掲載)

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