赤色赤光

記憶を、子どもたちに伝える。阪神淡路大震災18年。

2013年1月17日

  昨日、たまたま神戸市内のある幼稚園で講演を務めました。300人ほどの若いお母さんたちが熱心に私の話を聴いてくれました。終了後、園長先生が保護者に語りかけられました。

 「明日は震災18年目を迎えます。明日のお弁当はおにぎり2個にしてください。具は入れない。これは、あの日、避難所でいちばん最初にいただいた配給のおにぎりを忘れないため、ずっと当園で続けていることです。そして、幼い子どもたちに震災の体験、いのちの大切さを伝えてあげてほしいと思います」
  
 今日、あの日から18年目の1.17を迎えます。幸いパドマ幼稚園では大きな被害はありませんでしたが、有縁の幼稚園・保育園、子ども達に大きな犠牲がありました。とりわけ子どもの死は、親として受け入れ難く、悔やんでも悔やみきれません。
 昨日の朝日新聞に西宮市で毎年この日に開催される「子ども追悼コンサート」の記事が掲載されていました。悲痛な子どもの死と向き合うにはどうすればいいのか、小学校や幼稚園関係者、宗教者が集まって議論した結果は、「たくさんの子が亡くなった事実を示すこと」だったといいます。震災死した子どもをすべて記録する。死んだ子の名前を新聞をめくり、学校園に訊ねて、一人一人集めていったといいます。
 兵庫県内で亡くなった子どもは514名。小学生のわが子を喪った父親がこう言ったそうです。
 「今も小さな子が登校するのを見るのがつらくて、その時間を避けて通勤しています。生きていれば今年29歳。自分の中では、ずっと子どものままです」
 
 いのちをたいせつに。そういうスローガンはたくさんありますが、それを自分の体験としてわが子に語り伝えることは少ない。生きる、ということはかくも不思議な営みなのです。一個のおにぎりにその願いが一杯詰まっています。
 
 

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