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運動と学力は相関する。脳の実行機能について

2016年5月17日

運動と体育の意味の違いっておわかりになりますか。
運動は全身を楽しく動かすことで、体育は健康や体力増進のための教育をいいます。

当園にも体育の先生がいますし、体育レッスンがあるのですが、しかし、小学校のような科目として体育を考えているわけではない。幼児教育とは生活教育ですから、たとえ屋内にいても、机の上の活動をしていても、広い意味で運動あそびに親しんでいるわけで、当園の場合は、その活発度がきわめて成熟しているのだと思います。

ところで、毎日体を動かすと脳が発達するといったら、意外でしょうか。「脳=知力=勉強」という公式が出来上がっていて、体育は脳とは別、という思い込みが少なくありません。しかし、脳科学が発達してきた現在では、運動が学力向上と相関関係にあることが明らかにされています。

早稲田大学のスポーツ科学学術院講師の紙上敬太先生は、大学のウエブサイトで「運動は子どもの脳を育てる」という小論を発表されています。要約するとこうなります。

「脳には学力と密接にかかわる〈実行機能〉と呼ばれる高次脳機能があり、ここでは目標を達成するために思考や行動をコントロールする機能を扱っている。具体的には論理的思考、計画性、問題解決能力などが含まれるが、過去5年以上に渡る研究によって、運動量・体力が子供の実行機能に関わっていることが明らかにされてきた。つまり、これらの研究では、体力が高い子供ほど実行機能が優れていることが示されている」

専門的な話は省略しますが、運動が子どもの意欲や心情を形成しているのであって、それはけっして健康や体力にとどまるものではないというのです。たとえば当園のように、毎日体育ローテーションがあって、さらに朝礼、日課というような運動の組み立ては、子どもの脳の発達に適っているということでしょう。しかも実行機能は、学力に対してだけではなく、将来の精神的・身体的健康、QOL(生活の質)、仕事上の成功、円満な家族生活など、私たちの生活のありとあらゆる面に対して重要だと考えられているのです。

今や、都会、田舎の区別なく、子どもの運動量の減少は深刻です。私のような「原っぱ世代」と違い、テレビやゲームなど室内のあそびが主流、親御さんもインターネットとスマホでは、相当意識しないと、毎日の運動はむずかしいのかもしれません。
運動がしっかりできていないから、集中力がなく、落ち着きがない。小学校に上がって、先生の話が聞けない、授業中、立ち歩くという事態はじつは運動不足による問題でもあるのです。 もちろん、基本はたのしくみんなであそぶということ。心の充実こそ、運動効果が上がる最適期です。

実行機能とはすなわち心の充実をいいます。仏教で言う「心身一如」(心と体の育ちは切り離せず、密接に関連しながら育ち合っている)の真意を、改めて思い知らされました。

▼紙上先生のサイト

運動は子供の脳を育てる/紙上 敬太(スポーツ科学学術院講師)

 

 

 

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