赤色赤光

さようなら、子どもたち。卒業旅行。

2011年3月10日

 3月に入ると、幼稚園は一気に卒業モードが本格的となります。今年は、祖山参拝が法然上人800年遠忌を記念して合同開催となったので9日となり、行事も目白押しとなりました。
 
 8日はさよならパーティーでした。年長児と在園児の交流を目的としたもので、全園児が講堂に集まって、歌声のエールを交換しました。一番最初に最年少が「そうだったらいいのにな」を歌い、年少、年中と順次学年が上がって、最後に卒業生たちが別れの歌「友だちはいいものだ」を返すのですが、その歌声の晴れやかさ、豊かさといったこと…感激しました。パドマ幼稚園は、いつも歌声にあふれていますが、発表会と違って、子どもどうしが互いに届けるそれには、格別の思いを感じます。年長の子どもたちにとって、下の学年の弟や妹たちの切なる歌声は、自分が綴ってきた歌の記憶を呼び起こすのではないでしょうか。うれしい時、つらい時、そこに仲間がいて、いつも歌があったと。

 9日には、みんなで京都東山の浄土宗総本山知恩院に参拝しました。今年は浄土宗大阪教区に所属する幼稚園・保育園合同の開催となり、総勢1200名の園児たちが一緒にお参りしました。広い知恩院の本堂(御影堂)もさすがに狭く感じられましたが、年長の子どもたちは、本堂の正面、真ん中にあって、よく他園の手本となってくれました。立派でした。
 
 「法然さまという偉いお坊さんに、卒業のご報告に行きます。おかげで幼稚園生活を終えることができます。ありがとうございました」
 京都に向かう行きのバスの中で、年長の先生がそう子どもたちに説明していました。卒業は子ども自身の私的な行事ですが、しかし、それを法然上人や仏さまからの加護の賜物として見れば、もっと大きな縁としてとらえなおすことができます。これから世界に飛び立つひとつの人格や才能への祝福といってもいい。大きなものに抱かれ、そして導かれた者にとっての僥倖。仏教の幼稚園として、ふさわしい参拝の行事でありました。
 
 10日、一行は琵琶湖を望む広場で、体育あそびを満喫しました。幼稚園生活の間、遠足や合宿で何度となく体験した野外活動も、これが最後となります。広い芝生の上を、友だちと駆け回り、はしゃぎ、手をつないだり、抱き合ったり…そのふるまいの一つひとつが明るく、また愛おしく感じられ、ふと映画のラストシーンを見ているような感傷に陥りました。
 
 仏教の「諸行無常」とは、すべては変成し、流転することを意味します。一つとして絶対とか永遠といういものはない。人も生まれ、生きて、やがて最期を迎えます。未来にあふれた子どもたちに適切ではないかもしれませんが、人はみな別れなくてはならない存在なのです。だからこそ、今を見つめ、今を精一杯励もう。小学生という次のすばらしい出会いのために、いまこうして尊い別れのための時をていねいに刻んでいこうとする友だちや先生たちの願いが静かに伝わってきました。
 
 さようなら、子どもたち。ありがとう、子どもたち。

ページトップへ